「Make AIに顧客リストを渡しても大丈夫だろうか」「社内の企画書を読み込ませたら、どこかに保存されるのか」。そう疑問を感じて、自動化シナリオを組む手が止まってしまったことはないだろうか。Make AIはノーコードで複雑なワークフローを実現できる強力なツールだが、入力データの取り扱いを誤ると、情報漏洩やコンプライアンス違反につながる恐れがある。
相談時に前提をそろえやすいよう、[Make AIのメーカー公式情報](https://www.make.com/en)も一度確認しておくと安心です。
この記事では、Make AIの公式ヘルプや利用条件を基に、入力した文章やファイルがどのように扱われるのかを整理する。個人情報や機密データをどこまで渡してよいのか、設定で制御できる範囲はどこか、そして業務で使う際に押さえるべき線引きを具体的に示す。
あなたが気にしている「データの扱い」、3つの疑問をほぐす
Make AIに入力した情報について、多くの人が気にするのは次の3点だ。
- 入力内容は保存されるのか
- AIの学習に使われるのか
- 他のユーザーに見られる可能性はあるのか
これらは似ているようで、それぞれ別の仕組みで管理されている。Make AIの公式ドキュメントやヘルプページを確認すると、データの流れは主に「シナリオ実行のための一時的な処理」「ログとしての保存」「AI機能を提供する外部サービスとの連携」に分かれる。
まず、Make AI上で作成したシナリオ(自動化の流れ)に渡したデータは、その実行に必要な範囲で処理される。例えば、Google Sheetsから取得した顧客名を元にメールを送信するシナリオでは、顧客名がMake AIのサーバーを通過する。このとき、データは暗号化された通信経路で送受信され、実行完了後は一定期間ログとして保持される場合がある。
ただし、Make AI自体が大規模な言語モデルを内蔵しているわけではない。テキスト生成や要約などのAI機能は、OpenAIやGoogleなどの外部AIプロバイダーと連携して実現される。つまり、Make AIに「文章を要約して」と指示した場合、その文章は連携先のAIサービスに送信されることになる。ここで重要なのは、Make AIがデータをどこに渡すのか、そして連携先がそのデータを学習に使うかどうかだ。
情報の種類で分ければ、判断がぐっと楽になる
「どこまで入れていいか」を判断するには、まず手元の情報を分類する必要がある。一般に、業務データは以下の3段階で整理すると線引きしやすい。
| 分類 | 内容の例 | Make AIへの入力 |
| — | — | — |
| 公開情報 | 企業Webサイトの内容、プレスリリース、公開済みの仕様書 | 基本的に問題なし |
| 準機密情報 | 社内マニュアル、売上目標、内部向け報告書 | 条件付きで可(後述) |
| 機密情報 | 顧客の個人情報、契約書、設計図、未公開の財務データ | 原則禁止 |
公開情報であれば、たとえ外部AIに送信されてもリスクは低い。しかし、準機密情報や機密情報を扱う場合は、Make AIの設定と連携先AIの利用条件を細かく確認しなければならない。
特に注意が必要なのは「個人情報」の取り扱いだ。日本の個人情報保護法では、生存する個人を識別できる情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど)を本人の同意なく第三者に提供することを原則禁止している。Make AIのシナリオでこうした情報を外部AIに送信すると、法令違反になる可能性がある。
個人で使うか、会社で使うかで変わる設定のポイント
Make AIの利用シーンは、個人のちょっとした自動化から、チームや企業全体での業務効率化まで幅広い。そして、データの扱いに関するリスクは、利用形態によって大きく変わる。
個人利用でまず確認したいこと
個人でMake AIを使う場合、最も気をつけたいのは連携先のAIサービスが入力データを学習に使うかどうかだ。例えば、OpenAIのChatGPT APIを利用する場合、2026年現在、API経由で送信されたデータはデフォルトではモデルの学習に使用されない(詳細はOpenAIの公式ポリシーを参照)。しかし、無料のチャット版ChatGPTなどでは、設定をオフにしない限り会話内容が学習に使われる可能性がある。
Make AIからこうしたサービスを呼び出す際は、APIキーを取得したアカウントの契約プランとオプトアウト設定を必ず確認する必要がある。
業務利用で追加されるチェックポイント
企業やチームでMake AIを導入する際は、さらに考慮すべき点が増える。主なチェックポイントは以下の通りだ。
- データ処理契約(DPA)の有無:Make AIがEU一般データ保護規則(GDPR)に対応しているか、また顧客データを処理する際の契約条件を確認する。
- ログの保存期間とアクセス権:シナリオの実行ログに機密情報が含まれないか、またログを閲覧できるユーザーを制限できるか。
- 外部AIプロバイダーとの責任分担:連携先のAIがデータをどのように扱うかは、Make AIの管理外であることを理解し、必要に応じて各プロバイダーと直接契約を結ぶ。
Make AIの公式ヘルプには、セキュリティとプライバシーに関する記述がある。例えば、Makeのセキュリティ概要では、データの暗号化や認証の仕組みが説明されている。また、Makeの利用規約では、データの取り扱いに関する責任の所在が定められている。これらを読み込んだ上で、自社のセキュリティポリシーと照らし合わせることが欠かせない。
社内ルールに落とし込むための具体的な見方
「公式情報を確認しろ」と言われても、実際にどこを見ればいいのか分からないという声は多い。ここでは、Make AIを安全に業務利用するために、社内ルールを整備する際の手順を整理する。
1. データの分類基準を明確にする
前述の「公開・準機密・機密」の3分類を、自社の情報資産に当てはめてリスト化する。例えば、顧客名やメールアドレスは「機密」、社内の議事録は「準機密」、製品カタログは「公開」といった具合だ。この分類がないと、現場の担当者が迷ってしまう。
2. 利用するAIモジュールを限定する
Make AIには多数のAI関連モジュール(OpenAI、Google Cloud Vision、IBM Watsonなど)が用意されている。すべてを無制限に使えるようにするのではなく、業務に必要なものだけを許可し、それぞれのデータ取り扱いポリシーを確認した上で利用ガイドラインを作成する。
3. 入力前のチェックフローを設ける
例えば、以下のような簡易チェックリストを用意すると、誤入力を防ぎやすい。
- このデータに個人情報は含まれていないか?
- 社外秘のプロジェクトコードや未発表の数値が混ざっていないか?
- 仮に外部に流出しても、法的・契約上の問題はないか?
- 連携先AIの利用規約で、このデータを送信することが禁止されていないか?
4. ログの取り扱いを決める
Make AIのシナリオ実行ログには、デフォルトで入出力データが記録される場合がある。機密情報を含むシナリオでは、ログの保存期間を短く設定したり、ログにデータを残さないオプション(もし提供されていれば)を有効にするなどの対策を検討する。
それでも迷ったときの「使わない」判断基準
Make AIは非常に便利だが、どんなデータでも無条件に渡してよいわけではない。以下のようなケースでは、利用を控えるか、より厳格な管理が求められる。
- 厳格なデータ主権が求められる業界:金融、医療、公共機関などでは、データの保管場所や処理方法に厳しい規制がある。Make AIのサーバーが国外にある場合、国内法との整合性を確認する必要がある。
- 大量の個人情報を扱う業務:顧客の個人情報をAIで分析・加工するようなケースでは、匿名化や仮名化の処理を施さない限り、リスクが高い。
- 他社との秘密保持契約(NDA)に抵触する恐れがある場合:共同開発中の技術情報や、クライアントから預かった機密データをMake AIに入力すると、NDA違反になる可能性がある。
判断に迷ったら、「その情報を社外のクラウドサービスに保存しても問題ないか」と考えると分かりやすい。Make AIはクラウドベースのサービスであり、入力データは自社の管理下から離れる。その前提で、リスクを受容できるかどうかを検討する必要がある。
実際に多い疑問と回答
Q. Make AIの無料プランと有料プランで、データの扱いは変わるのか?
Make AIの料金プランによって、データの取り扱いに関する基本的なポリシーが大きく変わることはない。ただし、有料プランではログの保存期間が長くなったり、より高度なセキュリティ機能(IP制限など)が利用できる場合がある。詳細はMakeの料金ページで確認してほしい。
Q. 入力したデータがAIの学習に使われるのを完全に防ぐには?
Make AI自体は、ユーザーのデータをAIモデルの学習に使用することは明言していない。しかし、連携先のAIサービスが学習に利用するかどうかは、そのサービスの設定次第だ。例えば、OpenAIのAPIを利用する場合、API経由のデータはデフォルトで学習に使用されないが、念のためOpenAIのプライバシーポータルでオプトアウト申請を行うとより確実だ。
Q. シナリオの実行ログから機密情報を消す方法はあるか?
Make AIの設定で、ログの保存期間を最小限にする、またはログに特定のフィールドを記録しないようにする機能があるかは、公式ドキュメントで随時確認する必要がある。現時点では、機密情報を含むシナリオでは、そもそもログに残したくないデータを渡さない設計が推奨される。
Q. 社内で使う場合、どんな契約が必要か?
法人で利用する場合は、Make AIのエンタープライズプランを検討し、データ処理契約(DPA)を締結することが望ましい。また、連携先のAIプロバイダーとも必要に応じて個別の契約を結ぶべきか、法務部門と相談する必要がある。
まずは小さく始める、それが結局は近道
Make AIを安全に使いこなすためには、完璧なルールを最初から作ろうとせず、小さく始めて徐々に適用範囲を広げるのが現実的だ。具体的には、以下の3ステップを提案する。
1. 公開情報だけを使ったシナリオで試す:まずは自社のWebサイトの内容やプレスリリースなど、誰に見られても問題ないデータだけを扱うシナリオを作成し、操作感をつかむ。
2. 準機密情報を扱う際は、事前に1つのチェック項目を追加する:例えば「このデータは社外に出しても恥ずかしくないか」と自問する習慣をつける。
3. 機密情報を扱う必要が出てきたら、法務・情報システム部門と協議する:個人で判断せず、組織としての利用基準を定める。
データの取り扱いに関する不安は、適切な知識と準備があれば大幅に軽減できる。Make AIの公式情報を定期的に確認しつつ、自社のポリシーに合わせた利用ルールを整備していくことが、長期的に安心して使い続けるための鍵となる。

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